読書ミュージアム館長の秋月春花です♪
本日は、アート思考を身に付けるための末永幸歩の本『13歳からのアート思考』についてレビューしていきます。
『13歳からのアート思考』がどういった内容なのか、実際に読んだ感想など、ありのままに綴っていきますね♪
販売業者 | アマゾンジャパン合同会社 |
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運営責任者 | ジャスパー・チャン |
所在地 | 〒153-0064 東京都目黒区下目黒1-8-1 |
電話番号 | 0120-899-543 |
末永幸歩の『13歳からのアート思考』の価格と目次および概要
末永幸歩の『13歳からのアート思考』はダイヤモンド社より出版されており、価格は下記の通りです(すべて税込)
本の目次については、下記の通り。
ORIENTATION アート思考ってなんだろう――「アートという植物」
CLASS 1 「すばらしい作品」ってどんなもの?――アート思考の幕開け
CLASS 2 「リアルさ」ってなんだ?――目に映る世界の“ウソ”
CLASS 3 アート作品の「見方」とは?――想像力をかき立てるもの
CLASS 4 アートの「常識」ってどんなもの?――「視覚」から「思考」へ
CLASS 5 私たちの目には「なに」が見えている?――「窓」から「床」へ
CLASS 6 アートってなんだ?――アート思考の極地
EPILOGUE 「愛すること」がある人のアート思考
おわりに
注
作品情報
参考文献
〔“大人の読者”のための解説〕「知覚」と「表現」という魔法の力(佐宗邦威)
[実践編]アート思考の課外授業!
章ごとでさらに項目が分かれており、章末ごとに「もう一つの視点」としてさらに一歩進んだ授業が展開されています。
概要について簡単に述べると、アートの中に「自分なりの答え」を見つける思考を育まんとする著者の手によって書かれた「アートで思考力を磨く」ための一冊といったところでしょうか。
『13歳からのアート思考』の著者は末永幸歩(すえながゆきほ)
『13歳からのアート思考』の著者は、東京都出身の末永幸歩(すえながゆきほ)。
敬称は略させていただきますね。
経歴について簡単に書くと、武蔵野美術大学造形学部卒業、東京学芸大学大学院教育学研究科(美術教育)を修了後、東京学芸大学の個人研究員として美術教育の研究に励んでいます。
一方で、中学・高校の美術教師として教壇にも立ち、アートを通して「ものの見方を広げる」ことに力点を置いたユニークな授業を展開。
その授業は知識・技術偏重型の現在の美術教育のあり方に問題意識を持ったことから始まったもので、生徒のみならず本作を読んだ大人からも大きな反響を得ました。
アーティスト家系に育ったことから自身も幼少期よりアートに親しんでおり、実際にアーティストとしても活動されているようです。
末永幸歩の『13歳からのアート思考』の内容
では、そんな末永幸歩の本『13歳からのアート思考』とは一体どのような内容なのでしょうか。
章ごとに簡単にまとめてみました。
ORIENTATION アート思考ってなんだろう――「アートという植物」
アート思考とはそもそも何か――ここではアートを植物にたとえ、アート思考を構成する三つの要素について説明されています。
三つの要素とは、地表に咲いている「表現の花」、興味や好奇心・疑問などアート活動の源となる「興味のタネ」、アート作品が生み出されるまでの長い探究の過程を示す「探究の根」。
それぞれを説明したのち、作品が生み出されるまでの過程がもっとも大切であることが述べられています。
また、このアート思考は実際のアートの世界に限ったものではなく、すべての人にとって役立てることができるとも書かれていました。
CLASS 1 「すばらしい作品」ってどんなもの?――アート思考の幕開け
「すばらしい作品」とはどういうものかを実際に自画像を描きつつ、アンリ・マティスの作品<緑のすじのあるマティス夫人の肖像>を取りあげて解説。
かつてのアートの世界では、うまく描かれているもの、美しいもの、目に映った世界そのままに描かれているものがアートの「正解」とされていました。
そんな時代にあって、マティスの絵は決してうまいわけでもないし、色使いも美しいとは言えません。
それなのにマティスの絵が「すばらしい」と評価されているのは、自分なりの答えを見つけ出し、それまでのアートの「正解」から絵を解放することができたからだとのこと。
「なに」を基準にして「すばらしい」と感じるか――気がついたことや感じたことを紙に書いていく「アウトプット鑑賞」を通し、感性を磨いていきます。
そっくりに描けている自画像だけがすばらしいのではなく、自分が持っているものの見方を少し変えることで見えてくる答えを探ります。
CLASS 2 「リアルさ」ってなんだ?――目に映る世界の“ウソ”
「リアル」な作品とはどういうものかを実際にサイコロを描きつつ、パブロ・ピカソの作品<アビニヨンの娘たち>を取りあげて解説。
「リアルさ」とは立体感があって陰影などもきちんと表現されたもの――実際、それまでのアートの世界でも、遠近法を使用して描かれたものが「正解」とされていました。
そんな中で、ピカソの絵は遠近法で描かれているわけでもないし、正面を向いているのに鼻は真横から見ているように描かれていたりと、「リアル」からはほど遠いものです。
遠近法は一つの視線から見た世界しか描くことはできず、実際に見ている世界の半分しか映し出すことができません。
従って、遠近法ではサイコロの目の裏側までは描くことができず、サイコロを知らない人にとってはそれが本当に「リアルなサイコロ」なのかはわかりません。
ピカソの絵は多視点からとらえたものを再構成し、「新しいリアルさ」を追究したことで生まれたものと著者は考えています。
CLASS 3 アート作品の「見方」とは?――想像力をかき立てるもの
アート作品の「見方」について、ワシリー・カンディンスキーの作品<コンポジションⅦ>を取りあげて解説(※画像はイメージです)
美術館や展覧会などに行っても、なにが描いてあるかわからない、どこをどう見ればよいのかわからなくてモヤモヤする・・・。
そんな現代アートに対する「見方」として、通常のアウトプット鑑賞に加えて「どこからそう思うか」、「そこからどう思うか」という視点を加え、考えていきます。
人の心に直接響き、見る人を惹きつけるために「具象物が描かれていない絵」を描くという自分なりの答えを見つけ出したカンディンスキー。
このような作品をもっと深めるための方法として、著者は「背景とのやりとり」、「作品とのやりとり」の2種類があると述べています。
絵の作者が伝えたかったことを正確に読み取るだけがアート鑑賞の正解ではない――主観的に考えることの大切さが書かれていました。
CLASS 4 アートの「常識」ってどんなもの?――「視覚」から「思考」へ
アートにおける「常識」とは何か――5つの質問に回答しつつ、マルセル・デュシャンの作品<泉>を取りあげて解説。
これに対してイエスかノーかで回答し、なぜそう思うかを自分で考えることで、アートの常識を超えられるのかを見ていきます。
デュシャンの作品は、ただ便器を選んでサインしただけのもの。
しかしこの作品が生み出されたことにより、これまで誰も疑うことがなかった「目で見て美しいのがアート作品」という常識を覆し、「頭」つまり思考で鑑賞するアートに移行したのだと著者は言います。
視覚に頼って鑑賞しているだけでは見えてこないもの――私たちが抱いているアートの常識を徹底的に覆されますね。
CLASS 5 私たちの目には「なに」が見えている?――「窓」から「床」へ
アートを鑑賞する上で私たちの目には「なに」が見えているのか、5分間ラクガキをしつつ、ジャクソン・ポロックの作品<ナンバー1A>を取りあげて解説。
絵を見る限りでは具体的に何かが描かれているわけでもなく、ただ何も考えずに描きなぐったかのように見えます。
そこに何を感じるか――「窓」と「床」のたとえを通して述べられています。
窓を見てくださいと言われて多くの人は窓そのものではなく「窓の向こうにあるもの」を見ているはず――同じように、床を見てくださいと言われた場合「床の向こうにあるもの」は見えず床そのものを見ているのであり、ポロックの作品は「床」に似ている、と。
つまり、ポロックの作品は「絵の具が貼り付いたキャンバス」という物質そのものであり、そこにイメージは存在しないことが語られています。
5分間ラクガキしてみてと言われたら人は無意識に何らかのイメージを描こうとしますが、「紙に書かれた鉛」という物質そのものがアートになりうるのだということを教えられました。
CLASS 6 アートってなんだ?――アート思考の極地
どこまでがアートで、どこからがアートではないのか――4枚の写真を見ながらアートと思うものに丸を付けその理由を考えるとともに、アンディー・ウォーホルの作品<ブリロ・ボックス>を取りあげて解説。
食器用洗剤として流通していた洗剤のパッケージを、そっくりそのまま木箱に写し取っただけの作品が、果たしてアートになりうるのか。
ウォーホルの作品は、絵画や彫刻、建築などをアートとする「アートの枠組みそのもの」でさえも超越し、ただの食器洗剤と同じ視線で触れてほしかったのではないかと著者は言います。
4枚の写真の中にはカップヌードルの写真もあり、それがアートではないと仕分けた理由としては、市場に流通している「商品」であり誰もが簡単に手に入れられるから、というものでした。
見た目や作品形態の問題ではなく、その内容によってアートかアートでないかが決まる。
「見方」によっては私たちが目にするものすべてがアートになりうるのだということを教えてくれています。
末永幸歩の『13歳からのアート思考』を読んだ感想
ここからは、末永幸歩の『13歳からのアート思考』を読んだ感想について書きますね。
一言で言うと、とても勉強になる本でした。
私自身、「アートはこうあるべき」、「アーティストとはこういう人」といった思い込みがあり、自分には遠い世界だと思ってきました。
本作を読んでみてビックリ、アートに対して「常識」だと考えてきたことや思い込みが、読み進めるたびに良い意味でどんどん裏切られていきました。
私が特に「なるほどなぁ」と思ったのは、CLASS 2の「リアルさ」の話です。
サイコロをできるだけリアルに描いてみてと言われたら、1~6まで目がある正方形のあの物体をイメージして描く方が多いのではないでしょうか。
私もかつて授業で習った遠近法を使って描いてみましたが、著者によると遠近法で描かれたものは実際に見えている世界の半分のリアルでしかないと言います。
たとえば、遠近法で描いたサイコロに1、3、5の目が出ているとして、残りの目は2、4、6が隠れていると思うのが当然ですよね。
でもそれは私たちが「サイコロ」というものが何かを知っているからそう感じるのであって、そもそもサイコロを知らない人からすると遠近法で描かれたその絵が「リアルなサイコロ」なのかどうかはわからないというのです。
絵として描かれていない部分に「ウソ」が隠れているかもしれないとなると、遠近法で描かれたサイコロは「リアルではない」ということになる。
つまり、自分の目に見えているものだけがアートのすべてではないということ。
なんとも、深い・・・こういった視点でものを考えたことがなかったので、とても新鮮でした。
私自身はアートを鑑賞することは好きだけれども、アートそのものに詳しいわけではありません。
どんなふうにその絵をとらえれば良いのか、目の前にある絵をどう考えればよいのかわからなくて戸惑ったことも、一度や二度ではないです。
所詮自分はアーティストではないし、芸術のことはよくわからないから芸術を語る資格も無いと、ずっとそう思ってきました。
しかし、本作ではアーティストとは文字通りの意味(画家や彫刻家、建築家など)だけに限った話ではないことが述べられています。
どんな職業であろうと、どんな世界に身を置いていようとも、「自分なりのものの見方・考え方」で「自分だけの答え」を見つけ出せる人こそがアーティストなのである、と。
その意味では私もアーティストだと言えるし、このブログを読んでくださっているあなたもアーティストなんですよね。
絵画や建築、彫刻だけがアートではない――むしろ日常にありふれているどんなものでもアートになりうるんだと考えたら、すごくステキだなぁと思います。
CLASS 3以降はちょっと深くて私にはついていけないところもありましたが(笑)、全体としては面白く読める本でした。
末永幸歩の『13歳からのアート思考』の口コミ
Amazonのサイトに末永幸歩の『13歳からのアート思考』に関する口コミが載っていましたので、良い口コミと悪い口コミについて私なりにまとめてみました。
詳しい口コミ内容については、Amazonのサイトをご参照ください♪
良い口コミ
まずは良い口コミから。
・興味深い授業で、自分が今まで育んできたアートへの偏見を捨てることができた。
・実際に手を動かしながら自分の思考を整理できるので、楽しく学べる。
・自分なりに鑑賞し、自分なりに表現するための参考になる本だった。
・中学生のときにこの本に出会っていたら、世界が変わっていたと思う。
悪い口コミ
では次に、悪い口コミについて見てみましょう。
・現代では多様性も浸透してきているので、今さら改めて言うまでもない内容。
・タイトルの「13歳からの」が購読層を狭めているのではないかと心配になる。
・この本を読み終わっても、アートに対して興味が湧くことはなかった。
・持論を展開するのに歴史を曲解している。芸術や宗教への冒涜だと思う。
まとめ
アート思考を身に付けるための末永幸歩の本『13歳からのアート思考』について書いてきましたが、いかがでしたでしょうか。
口コミを眺めていると、良い口コミもたくさんあるけど悪い口コミも負けず劣らずたくさん見受けられます。
中には著者の人格そのものを否定するようなことも書かれており、悲しい気持ちになりました・・・。
生き方も考え方も十人十色――それは十分に承知していますが、著者はもちろんのこと口コミを読む人の気持ちも少しは考えて書いてほしいものです。
・・・話が逸れました。
人は誰でも子どもの頃は「アート思考」を持っていると言います。
アートの世界に限らず、大人になればなるほど「こうあらねばならない」といった固定観念や常識(と思われていること)にとらわれがちになり、物事の本質が見えなくなるものですよね。
しかし、「アート思考」は、大人になってからでも取り戻すことができます。
私自身、アートに対してもともと疎かったというのもあり、アートをどうやって楽しめば良いのかわからず戸惑ったこともありました。
本作ではそんなアート界の常識や自分自身のアートに対する思い込みを、ことごとく裏切ってくれます。
ただ純粋に疑問を持ち、興味を向くままに物事を突き詰めていた子どもの頃の気持ちに返り、「自分だけのものの見方・考え方」で「自分なりの答え」を見つけ出せる自分でありたいなと思いました。
本作はアートに興味のある方はもちろん、実は美術の授業がニガテだったという方にとっても、得るものはある本と言えるでしょう。
ぜひ一度読んでみてくださいね(^^)
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以上、読書ミュージアム館長の秋月春花がお送りしました♪
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