アニメ『ロミオの青い空』の原作『黒い兄弟』――過酷な現実にも屈しない少年たちの物語

ドイツ文学

読書ミュージアム館長の秋月春花です♪

本日は、アニメ『ロミオの青い空』の原作として知られ、過酷な現実にも屈しない少年たちを描いた小説『黒い兄弟』についてレビューしていきます。

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販売業者大日本印刷株式会社
運営責任者田宮 幸彦
所在地〒141-8001 東京都品川区西五反田3-5-20
電話番号0120-29-1815

 

『ロミオの青い空』――このアニメを観て、少年たちの熱い友情と、どんな困難にも負けずに団結で乗り越えていく姿に涙した方も多いのではないでしょうか。

私もその一人です。

本作『黒い兄弟』は『ロミオの青い空』の原作として知られる小説であり、辛い現実の中にあっても決して希望を捨てず、仲間たちとともに困難を乗り越えていく少年たちの姿が描かれています。

結論から先に申し上げると、『黒い兄弟』は子どもから大人まで世代を超えてオススメできる小説と言えるでしょう。

なぜなら、本作は人身売買と児童労働という実際にあった問題をテーマにしており、そこには私たちが決して忘れてはならない歴史が物語られているからです。

誰もが貧しく、生きていくだけで精一杯な時代――「家計を助けるため」に売られ、遠い地で死ぬまで働かされる子どもたちが大勢いました。

その中には、10歳にも満たない小さな子どももいたそうです。

生きるために人身売買が平然と行われ、子どもの権利など無く雇い主に当然のようにこき使われていた時代――。

そんな現実を描いた『黒い兄弟』が一体どんな作品なのか、実際に読んだ感想など、これから下記に綴っていきますね。

アニメ『ロミオの青い空』の原作『黒い兄弟』の作者について

『黒い兄弟』の作者は、1894年ドイツ生まれの作家リザ・テツナーです。

経歴について簡単に書きますね。

1933年、ナチスが政権を掌握するとともにスイスに亡命。

その後1963年に亡くなるまで、本作『黒い兄弟』の舞台になっているルガーノ近郊で創作活動に従事しました。

『黒い兄弟』を原作としてアニメ化されたものが、「世界名作劇場」シリーズ『ロミオの青い空』です。

辛い日々の中でも常に助け合い、力強く生きていく少年たちの友情と成長が話題になり、多くの人びとの感動を呼びました。

アニメ『ロミオの青い空』の原作『黒い兄弟』の内容

まず『黒い兄弟』の内容を簡単に述べると、イタリア・ミラノを舞台に生きる煙突掃除の少年たちの物語、といったところでしょうか。

煙突掃除夫としてミラノに売られ、過酷な労働条件の中で働かされる――。

そんな現実の中でも「黒い兄弟」の仲間たちとともに団結し困難を乗り越えようとする彼らの姿に、人間の生きる力の強さを教えられた気がしました。

登場人物

ここで『黒い兄弟』の主要登場人物を紹介しますね。

「黒い兄弟」:ミラノの煙突掃除の仲間たちによって結成された秘密同盟。メンバーは下記の通り。

・ジョルジョ:スイスのソノーニョ村出身の少年で、本作の主人公。
・アルフレド:「黒い兄弟」のリーダーを務める。聡明だが、秘密多き少年。
・ダンテ:漁師の子。煙突掃除夫として売られ、ミラノにやって来た”ちび”の少年。
・アントニオ:体の大きな少年。煙突掃除夫としてミラノに売られる。

「狼団」:ミラノの不良少年グループ。メンバーは下記の通り。

・あばた:「狼団」のリーダーを務める少年。ミラノの不良たちのカリスマ的存在。
・ファウスティーノ:猫のような身のこなしから、「猫」とあだ名される少年。
・アンゼルモ:非常に卑劣かつ卑怯な性格で、ことあるごとにジョルジョを虐める。

他にも、下記のような人物が出てきます。

・ほお傷の男:子どもの売り買いで生計を立てる男。ほおに傷がある。
・ロッシ親方:ミラノの煙突掃除夫で、ジョルジョを引き取ることになる。
・アンジェレッタ:ロッシ親方の娘。病気がちだが非常に心優しい。
・カセラ先生:ジョルジョたちに良くしてくれる親切な医師。
・ビアンカ:アルフレドの妹。ある理由から離ればなれになっている。

もちろん、まだまだ多くの人物が登場しますよ(^^)

根っからの悪人もいれば、悪人っぽく書かれているけれど本当はいい人だったり、実に個性豊かな人物が揃っているので、読んでいて飽きが来ないのが魅力ですね。

あらすじ

次に『黒い兄弟』のあらすじについて簡潔に書いてみます。

スイス・ソノーニョ村に住むジョルジョは、祖母、両親、双子の弟とともに貧しいながらも幸せに暮らしていました。

ところがある年、村が様々な不幸に襲われます。

冷害、日照り、山火事、母さんのけが・・・けがを診てもらうためには、当然お金が必要です。

しかし、ジョルジョ一家にはそんなお金はありません。

父さんは苦悩の末、ほお傷の男にジョルジョを売り渡す決断をします。

売られたジョルジョに待っていたのは、ミラノでの煙突掃除の仕事――それは過酷な運命の幕開けでした。

下宿先のおかみとその息子からの虐待、「黒い兄弟」の仲間たちとの絆、「狼団」との闘争、親友の死、そしてミラノからの脱走――。

様々な困難の先に、果たしてジョルジョは幸福を手にすることができるのでしょうか。

アニメ『ロミオの青い空』の原作『黒い兄弟』のレビューと感想

ここからは、アニメ『ロミオの青い空』の原作である『黒い兄弟』のレビューと感想について書いていきますね。

感想

私はもともとアニメの『ロミオの青い空』が大好きです。

笠原弘子さん歌唱によるオープニング曲「空へ・・・」は、何度聴いてもそのメロディの美しさに惚れ惚れ・・・この楽曲のイントロが流れただけで号泣するのは私だけではないはず(笑)

好きすぎるがゆえに何回も観たアニメですが、その度にロミオたち「黒い兄弟」のメンバーが織りなす友情にホロリとさせられましたし、「狼団」との闘争にもヒヤヒヤしたものです。

何度も観ているからストーリーもわかっているはずなのに、困難な中でもまっすぐに生きる少年たちの姿には毎回胸を打たれますね。

そんなアニメでの感動のあとに原作である『黒い兄弟』を読み、内容が割と違うことに驚くと同時に、児童文学とは思えないようなシビアなテーマにも改めて驚かされました。

人身売買、児童労働・・・教科書の中で単語として学ぶことはあっても、この言葉に秘められた現実がどういうものかまでは、調べてみてもなかなか実感としては迫ってこないですよね。

本作は主人公のジョルジョがミラノに売られ、ロッシ親方の元に引き取られて煙突掃除に従事する日々を描いていますが、このロッシ親方の家族であるおかみと息子アンゼルモが本当に腹の立つ人物で・・・。

ジョルジョへの嫌がらせや虐待がこれでもか、これでもかと続きます(^^;

ロッシ親方自身は決して悪い人ではないものの、最後にはやはりジョルジョよりも息子アンゼルモの言うことを信じてしまうあたり、やはり「親」なんでしょうね。

そんなジョルジョにとっての心のオアシスが親方の娘アンジェレッタで、私も彼女の存在には本当に心洗われる思いがしました。

でも、おかみとアンゼルモはめちゃくちゃ性格悪いし、そんな家族の中でこんなに良い子って産まれるものなんでしょうか・・・不思議(^^;

物語の途中、ジョルジョたち「黒い兄弟」はかなしい出来事も経験しますし、様々な困難にも直面します。

しかし、そんな辛い中でもジョルジョたちを助けてくれる人びとも現れ、諦めずに光を目指し続ける彼らの姿には本当に感動しましたし、勇気をもらいました。

こんな小さな子どもたちが健気に頑張っているんだから自分も頑張れるはずだと、自分を鼓舞させてもくれます。

もちろん、人それぞれ感じる限界は違うから無理は禁物だけれども、本作を読んだ誰もが前向きに頑張ろうと思える力をくれる――そんな作品であることは間違いありません。

アニメ『ロミオの青い空』との比較

ここからはアニメ『ロミオの青い空』との比較を、感想を交えつつ書いてみますね。

若干ネタバレも含んでいるので、嫌な方は読み飛ばしていただければと。

まず違うのは、なんといっても主人公の名前ですね。

アニメでは「ロミオ」ですが、原作では「ジョルジョ」です。

なぜそうなったのかは定かではないですが、「ジョルジョ」って日本語的に発音しにくかったりするのでしょうか。

まぁ「ジョルジョ」よりは「ロミオ」のほうが馴染み深い感じはしますよね(笑)

あとアニメと原作とで大きく異なるのは、ストーリー展開でしょうか。

アニメには無いのですが、原作ではジョルジョたち「黒い兄弟」の一部のメンバーがミラノから脱走する話が描かれています。

その後も紆余曲折を経て・・・ということになるのですが、やはりアニメで描ける内容には限界があるということを思い知らされますね。

ミラノ脱走というところから考えても、いかにジョルジョたちが劣悪な状況の中にいたかがわかります。

本当にかなしいことですよね・・・まだ年端もいかない子どもたちが命がけで逃げ出さなければならないほどの環境なんて。

他、意外ですがアニメでは主役級で活躍するアルフレドは、原作ではアニメほどのカリスマ性はありません。

また、アルフレドの妹ビアンカが現在置かれている状況がアニメだと悲劇的だけど、原作ではそれなりに良い状況下で過ごしているようです。

アルフレドとビアンカの描写の違いは、アニメが好きな方からするとちょっと物足りない感じがするかもしれません。

狼団のメンバーについては、アニメでは「ジョバンニ」と呼ばれている狼団のリーダーは、原作では「あばた」として登場しています。

本名じゃなくて、あだ名で呼ばれるという・・・性格はアニメも原作もそんなに違わないかも?

不良グループのリーダーと聞くとイメージは良くないけれども、本当は正義感と人情に溢れたヤツで、やがてジョルジョたちの助けとすらなってくれる存在です。

こういうツンデレ(?)な人物、私は好きですね(^^)

ロッシ家のおかみとアンゼルモの性格の悪さはアニメ・原作ともに変わらないです。

原作の方がより暴力的な描写が多く、思わずページを読み飛ばしたくなるような凄惨な場面が続くところも(^^;

肝心のロッシ親方はアニメでも原作でも決して悪い人間ではないものの、原作ではジョルジョがロッシ家を逃げ出すきっかけを作ってしまいます。

ロッシ親方・・・根っから悪い人じゃないだけに、ジョルジョを最後までかばってくれなかったのは私としても非常に残念でした。

他にも、アニメと原作とでの違いはまだまだたくさんあります。

アニメが好きだという方も原作派だという方も、ご自身で比較して違いを見つけてみるのもきっと面白いですよ(^^)

アニメ『ロミオの青い空』の原作『黒い兄弟』の口コミ

アニメ『ロミオの青い空』の原作『黒い兄弟』に関する口コミがAmazonに載っていましたので、良い口コミと悪い口コミについて私なりにまとめてみました。

詳しい口コミ内容については、Amazonのサイトをご参照ください♪

良い口コミ

まずは良い口コミから。

・等身大の少年の姿をそのまま見ている感じがして読みやすい。
・アニメと展開が違うので、アニメ派の人も新鮮に楽しめると思う。
・過酷な現実にも屈することなく立ち上がる少年の可能性に強く胸打たれた。
・ジョルジョたちの姿を通して、「本当の勇気」とは何かを教えてもらった。
・こんな時代が実際にあったんだということを絶対に忘れてはいけない。

悪い口コミ

では次に、悪い口コミについて見てみましょう。

・主人公ジョルジョの主観や心境が多くて活劇演出要素が物足りない感じがする。
・アニメが大好きなので期待して読んでみたけど、ちょっと拍子抜け。
・アニメの印象が強すぎるからか、原作はアニメほどの感動を得られなかった。

【評価】アニメ『ロミオの青い空』の原作『黒い兄弟』

ここからは、アニメ『ロミオの青い空』の原作『黒い兄弟』の評価について書いていきますね。

値段はどうなの?

『黒い兄弟』は上巻、下巻とあり、値段については下記の通り(出版社は、あすなろ書房)

・『黒い兄弟<上>』 1,760円(税込)
・『黒い兄弟<下>』 1,980円(税込)

この記事で紹介しているのは2021/10/11に装い新たに出版されたものであり、現在はハードカバー版のみ販売されています。

人身売買、児童労働という児童文学とは思えないほどの重いテーマを扱っていますが、これらは遠い過去の話ではなく、残念ながら現代でも問題になっています。

不当な搾取、守られることのない権利――不幸な子どもたちを一人でも無くしていくためにも、重い現実が描かれた本作は値段以上の価値はあると言えるでしょう。

気軽に読める?

何度も書いてきているように、本作は児童労働や人身売買がテーマであり、そこから察せられる通り決して明るい気持ちで読める本ではありません。

また、アニメに比べると暴力的な描写も多く、しかもより凄惨なので、読んでいるうちに気持ちまで引きずられてしまうかもしれません。

その意味では気軽に読めるとは言えないかもしれませんが、どんな困難にも負けずに立ち向かう子どもたちの姿からは得られるものも多いですし、ぜひ勇気を出して本作を手に取ってみていただければと思います。

実際にあったことだなんて信じられないけど?

ここまで書いてくると、本作で書かれている内容が実際にあったなんて信じられない、と思う方もいらっしゃるかもしれません。

人身売買、児童労働・・・これだけ聞くといかにも重々しい感じがしますし、にわかには信じられない気持ちになるのもわかります。

しかし、残念ながら本作に書かれていることは歴史の事実です。

そして、人身売買や児童労働が現在でも行われている国がある――そんなバカなと思っても、世界に目を向けてみればこれが事実であり、かなしい現実なのです。

インターネットで検索すれば、その現実が多数の写真とともに出てきますので、本当に信じられないという方はぜひご自分で調べてみてください。

一家を支えるために子どもたちが売られ、過酷な労働条件の中で働かされる――本作の場合は煙突掃除ですから、あの細い煙突の中に入らないといけないわけで、親方としては子どもの身体が成長するのは極力避けたいですよね。

そうなると食べ物も満足に与えられず、どうせ煤で汚れるのだから服もボロボロで顔も真っ黒なまま・・・不衛生な上に寝る場所だって布団なんて与えてもらえる子はほとんどいません。

本作でも、そういった描写がたくさん出てきます。

煙突の中に入っての作業は転落死や窒息死、あるいは煤を吸ったことで病気になり死んでいく子もあり、非常に危険かつ命がけであったことを想像することは難しくないでしょう。

思わず目を背けたくなるような現実ですよね・・・。

不幸に泣く子どもたちがもうこれ以上増えないように、私たち一人ひとりが本作を通して世界の真実に目を向け、知っていくことが大事なんだと思います。

それが今を生きる私たちの使命と言えるのではないでしょうか。

オススメできる方

本作は、こんな方にオススメです(^^)

・アニメ『ロミオの青い空』を観たことのある方。
・人身売買や児童労働の歴史について興味のある方。
・世界の諸問題について考えるきっかけがほしい方。
・子どもたちに読ませたい本がなかなか見つからない方。

オススメできない方

こんな方には、オススメできません。

・暴力的な描写がニガテな方。
・アニメ『ロミオの青い空』と同じ内容を期待している方。

まとめ

本日は、アニメ『ロミオの青い空』の原作として知られ、過酷な現実にも屈しない少年たちを描いた小説『黒い兄弟』について書いてきましたが、いかがでしたでしょうか。

アニメ『ロミオの青い空』は「世界名作劇場」シリーズとして放映され、タイトルに聞き馴染みのある方もいらっしゃるかと。

私もド真ん中世代で大好きなアニメの一つで、これまでにも何度もアニメを観てきました。

その原作である『黒い兄弟』は、子どもから大人まで世代を超えて読むことができる作品なのでオススメです。

人身売買、児童労働など現代でも問題になっているテーマを扱っており、その歴史を決して忘れてはならないと思うからです。

テーマが重いことに加えて、原作ではアニメよりも暴力や虐待などの凄惨な描写が多いため、子どもには読ませたくないという方もいらっしゃるかもしれません。

しかし、世界に目を向けてみれば現在でもどこかの国で行われていますし、どんなに法整備されていても、子どもの権利などあって無いようなものという国もあるのです。

その現実を子どもに見せたくないという気持ちは私も理解はできます。

でも、本当にそれでいいのでしょうか。

見せたくないものを見せないまま子どもたちが大人になる――世の中の不条理やそれに立ち向かっていく強さ、人の痛みや苦しみを知らないまま成長して、本当に人間として深みのある大人に、立派な人格の大人になれるでしょうか。

私はむしろ本作のような物語こそ子どもたちに読んでほしいなと考えています。

本作を読むことで過酷な歴史を知り、それが現在でも世界のどこかで起こっていることに目を向けてほしいと願うからです。

それがきっかけになって、不幸な子どもたちを救うために何か行動したいと思う子も出てくるかもしれません。

小さな一歩かもしれないけれど、この一歩が一人を変え、やがて世界を変えていくのだと私は信じています。

もちろん、大人の方にも読んでいただきたいですし、困難な現実にも負けずに強く生きる少年たちの姿に、学ぶことも多いのではないでしょうか。

私、秋月春花が自信を持ってオススメしますので、ぜひあなたも『黒い兄弟』を読んで、少年たちから勇気と希望をもらいましょう(^^)

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