イギリス文学:『オリバー・ツイスト』で貧困について学ぶ

海外文学

読書ミュージアム館長の秋月春花です♪

本日は、貧困にあえぐ下層階級の人びとに焦点を当てたイギリス文学『オリバー・ツイスト』についてレビューしていきます。

 

【中古】【古本】オリバー・ツイスト 上 新潮社 ディケンズ/著 中村能三/訳【文庫 海外文学 新潮文庫】

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『オリバー・ツイスト』がどういった小説なのか、実際に読んだ感想など、ありのままに綴っていきたいと思います♪

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『オリバー・ツイスト』の値段と構成および概要

『オリバー・ツイスト』は日本語訳がたくさん出ていますが、今回は私が実際に読んだ新潮文庫版(訳・中村 能三)について書きます。

<上><下>の2冊に分かれており、金額はともに364円(税込)です。

物語の構成としては、<上>が第一章から第二十八章まで、<下>が第二十九章から第五十三章までおよび解説となっています。

孤児として育てられた少年オリバー・ツイストが、様々な不幸や窃盗団との抗争を乗り越えて幸福な人生を掴んでいく長編小説です。

『オリバー・ツイスト』の作者について

『オリバー・ツイスト』の作者は、19世紀のイギリスを代表する文豪チャールズ・ディケンズです。

本作の他、『クリスマス・キャロル』、『大いなる遺産』、『二都物語』、『デイヴィッド・コパフィールド』などが有名であり、たびたび映像化もされています。

ディケンズは中流階級の生まれですが実際には非常に貧しく、両親の濫費によって生家が破産した後、12歳のときに親戚の靴墨工場に働きに出されます。

この工場で受けた仕打ちは実に酷いものであり、その後のディケンズの精神や執筆活動にも大きな影響を与えました。

自身の経験から、下層階級出身の人物を小説の主人公に据えて弱者の視点から見た社会の不条理や有り様を描いている小説が多いです。

本作『オリバー・ツイスト』はディケンズにとって初めての長編小説であり、本のタイトルにもなっている孤児の少年オリバー・ツイストが主人公です。

『オリバー・ツイスト』の内容

『オリバー・ツイスト』は、孤児として育てられた少年が様々な不幸に見舞われながらも、幸福な人生を歩み出していく姿を描いた内容になっています。

「よくありがちな話」と言われてしまえばそれまでですが、19世紀におけるイギリス下層階級の貧困の現実がリアルに描かれており、良くも悪くも非常に考えさせられる小説です。

登場人物

ここで、『オリバー・ツイスト』の登場人物について簡単に説明しておきましょう。

物語には、オリバー少年を取り巻く様々な大人たちが登場します。

・オリバー・ツイスト:救貧院で生まれた孤児で本作の主人公。
・フェイギン:窃盗団の頭を務めるユダヤ人。オリバーを無理やり仲間に引き入れる。
・ビル・サイクス:フェイギンの仲間。非常に血気盛んな男。
・ナンシー:幼い頃からサイクスに仕える情婦。素直で心優しき女性。
・ブラウンロー:温厚な紳士。オリバーの運命を大きく変える人物。

他は、下記のような人物が登場します。

・バンブル:教区吏を務める。暴力で孤児たちを支配しようとする。
・サワベリー氏:葬儀屋を営む老人で、オリバーを引き取る。気弱な性格。
・ノア・クレイポール:サワベリー氏に仕える少年。オリバーを虐める。
・モンクス:過去の因縁からオリバーを激しく憎む青年。精神疾患がある。

他にもまだまだたくさん出てきますので、ちょっと混乱するかもしれません。

あらすじ

『オリバー・ツイスト』のあらすじについて簡潔に書いてみます。

ネタバレが嫌な方は読み飛ばしてくださいね。

「オリバー・ツイスト」は救貧院で生まれた男の子、救貧院を管理する教区吏バンブルから酷い虐待を受けながら育ちました。

ある日オリバーは、お粥をもう少しくれるよう賄係りに頼む者にクジ引きで当たってしまいます。

オリバーは意を決し、お粥がもう少し欲しいと賄係りに告げるも、これが引き金になってオリバーは町で葬儀屋を営むサワベリー氏の元に貸し出されます。

しかし、ここでも安穏の日々はなく、徒弟のノアやサワベリー夫人から壮絶な虐めを受け続けていました。

耐えられなくなったオリバーは、ある夜ついにサワベリー氏の元を逃げだし、ロンドンへと向かいます。

ロンドンの街をさまよっているうちに、オリバーはユダヤ人フェイギン率いる窃盗団に捕まってしまいます。

無理やり彼らの仲間にされ、盗みを強要されてしまうオリバー。

ある日、仲間の少年たちとともに街中にいた時のこと――書店で本を読む紳士に狙いをつけた仲間が紳士の持ち物を盗った瞬間、仲間たちが一斉に逃げ出しました。

その現場をただ見ていただけだったものの、オリバーは犯人と勘違いされたまま捕えられてしまいます。

書店主の証言によって釈放されたオリバーは被害に遭った紳士ブラウンロー氏に引き取られることになり、ようやく心の安らぎを得たオリバーは幸福に包まれて日々を過ごしていきます。

しかし、窃盗団一味に危険が及ぶことを恐れたフェイギンは、ある日オリバーを再び捕えてしまいます。

フェイギンの仲間ビル・サイクスとともに、とある家に盗みへ出かけることになったオリバー。

しかし、家に侵入しようとした際に家人に気付かれ、負傷したオリバーはサイクスに置き去りにされてしまいます。

家人に発見されたオリバーは、その家の女主人メイリー夫人と養女ローズの手によって温かく介抱され、その後しばらくこの家で幸福なひとときを過ごします。

――その頃、モンクスという男がフェイギンに接近していました。

モンクスはオリバーとなんらかの因縁があるようで、フェイギンに良からぬ話を持ち込みます。

二人の会話を聞いてしまったサイクスの情婦ナンシーは、オリバーを救うためローズと面会するも、その後ナンシーは怒り狂ったサイクスに惨殺されてしまいました。

しかし、これがきっかけとなって一味には警察が入り、フェイギンは捕らえられた後に絞首刑、サイクスは逃走中に事故死しました。

そして、明かされるオリバーの出生の秘密――。

モンクスはオリバーの異母兄であり、父の遺産を独り占めするため私生児の弟オリバーを悪の道に堕とそうとしたこと、ローズはオリバーの母の妹であり、オリバーとモンクスの父はブラウンロー氏の親友であったことが明らかになったのです。

モンクスはその後アメリカに渡るものの悪の道から抜け切ることはできず、やがて獄中で死亡することになります。

オリバーはブラウンロー氏の養子となり、ようやく幸福な暮らしを手に入れたのでした。

『オリバー・ツイスト』を読んだ感想

『オリバー・ツイスト』を読んでの感想を私なりに書きます。

主人公のオリバー少年は生まれた頃から数々の不幸を経験し、ようやく幸せの日々を手に入れたと思っても、これでもかこれでもかと再び不幸が襲ってきます。

小説の話とはいえ、幼い少年がここまで不幸に遭うのを見るのは、やはりとても辛いものがありました(;_;)

いつの時代でも、貧困や暴力で一番に犠牲になるのは子どもなんですよね・・・。

本作に限らずディケンズの小説は社会の底辺にいる人びとに焦点を当てているものが多く、そこには優しさや温かさ、そしてまた愚かさや醜さといった、人間が本来持っている性質がそのまま描き出されています。

悪い大人にばかり出会い悪の道に引きずり込まれようとしても、人への感謝を忘れず自分の信念を貫き続けたオリバーは、なんと真っ直ぐな少年なんだろうと思いました。

と同時に、小説の中の話とはいえオリバーがあまりにも良い子なので、大人になってからその反動が来るんじゃないかと未来を勝手に想像してしまいました・・・(笑)

『オリバー・ツイスト』の評価

読書レビューサイトに『オリバー・ツイスト』に関する評価が載っていましたので、良い評価と悪い評価について私なりにまとめてみました。

詳しい内容については、こちらの読書レビューサイトをご参照ください♪

良い評価

まずは良い評価から。

・どんな苦しみの中でも、歪まず真っ直ぐな性格を貫けるオリバーが素晴らしい。
・大衆小説としての面白さは十分に盛り込まれており、愉快痛快で楽しい。
・オリバーがどう幸せになっていくのか、読み進める手が止まらない。
・悪人たちがとても個性豊かで面白かった。
・いちばん苦しんだ人がいちばん幸福になる権利があるということを教えてくれた。

悪い評価

では次に、悪い評価について見てみましょう。

・日本語訳があまり良くない。
・善人よりも悪人の方が目立ってしまい、主人公オリバーの印象が薄い。
・表現が回りくどくて読みにくい。
・オリバーがただただ可愛そうで、読んでいて悲しくなってくる。
・誰もが好きなストーリーだと思うけど、少し狙いすぎているのでは?

まとめ

イギリス文学『オリバー・ツイスト』について書いてきましたが、いかがでしたでしょうか。

本作には根底に「貧困」がテーマとして横たわっており、これは現代に生きる私たちにとってももはや他人事では無い話になってきています。

その意味で、非常に考えさせられる小説です。

読書レビューサイトでの評価を見ていると、「悪人の方が生き生きしている」、「主人公オリバーの影が薄い」という言葉が目立ちました。

実際いろいろ調べてみると、ディケンズの作品そのものに不自然なプロットのものが多いこと、初期の作品では主人公以外の脇役に個性を持たせることで作品を盛り上げていることなどがわかりました。

本作はディケンズの出世作なので、まさに脇役(フェイギンやサイクスなどの悪人)がオリバーよりも強い個性で描かれていたといえます。

オリバーが主人公なのに主人公らしくない(本のタイトルにまでなっているのに・・・)という点ではなんだかオリバーが不憫ですが、下層階級に生きる人びとの描写が非常に得意だったディケンズなので、イギリスでは好意的に受け入れられたようです。

また、本作は不幸続きの貧しい少年が最終的には善良な人に引き取られ幸福になっていくといった「よくありがちな話」として括られることも多いです。

悪人たちが最後はことごとく死亡するので、勧善懲悪モノに近い部分もあるかもしれません。

こうした「よくありがちな話」や勧善懲悪モノが「ありきたりでつまらない」と感じる方もいらっしゃると思いますが、好きな方にとっては非常に面白く読める小説であると言えるでしょう。

ディケンズは私の好きな作家の一人であり、ぜひとも本作を読んでいただきたいところですが、私自身は本作よりも『デイヴィッド・コパフィールド』を強くオススメしたいです。

『デイヴィッド・コパフィールド』はディケンズの自伝的要素を含んだ小説で、新潮文庫版(訳・中野 好夫)では全4巻に分けて出版されています。

不幸な生い立ちから幸福な人生へという流れや悪人たちが様々に登場することは本作とも共通していますが、『デイヴィッド・コパフィールド』の方がより重厚に物語が作られており、登場人物一人ひとりの個性もきちんと書き分けられています。

中野好夫による日本語訳も素晴らしいです。

興味のある方はぜひ、本作とも併せて手にとってみてくださいね(^^)

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以上、読書ミュージアム館長の秋月春花がお送りしました♪

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