読書ミュージアム館長の秋月春花です♪
本日は、絵本作家として知られるディック・ブルーナの生涯を描いた評伝『ディック・ブルーナ ミッフィーと歩いた60年』についてレビューしていきます。
森本俊司『ディック・ブルーナ ミッフィーと歩いた60年』(文藝春秋)
『ディック・ブルーナ ミッフィーと歩いた60年』がどういった内容なのか、実際に読んだ感想など、ありのままに綴っていきますね♪
販売業者 | 大日本印刷株式会社 |
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運営責任者 | 田宮 幸彦 |
所在地 | 〒141-8001 東京都品川区西五反田3-5-20 |
電話番号 | 0120-29-1815 |
『ディック・ブルーナ ミッフィーと歩いた60年』の値段と構成および概要
『ディック・ブルーナ ミッフィーと歩いた60年』は文藝春秋より出版されており、値段は下記の通りです(すべて税込)
本の構成については、下記の通り。
第1章 夢のような少年時代
第2章 戦争の影
第3章 破天荒な青年時代
第4章 デザイナーとして
第5章 ブルーナの芸術理論
第6章 うさこちゃんの世界
第7章 日本への思い
第8章 ブルーナ、未来へ
終章
文庫版あとがき
ディック・ブルーナ年譜
ディック・ブルーナの絵本一覧
引用・参考文献
解説 酒井駒子
章ごとでさらに項目が分かれており、章末ごとにコラムも設けられています。
概要について簡単に述べると、ミッフィーの絵本の作者として知られるディック・ブルーナの知られざる生涯を辿った評伝、といったところでしょうか。
『ディック・ブルーナ ミッフィーと歩いた60年』の著者と、ミッフィーの作者ディック・ブルーナについて
今回の記事を書くにあたり、2人の人物について簡単に紹介しておきますね。
森本俊司(もりもとしゅんじ)のプロフィール
森本俊司(もりもとしゅんじ)は1960年香川県の生まれで、今回ご紹介する『ディック・ブルーナ ミッフィーと歩いた60年』の著者です。
敬称は略させていただきますね。
朝日新聞社にて美術や宗教といった文化に関する記事を執筆するなど記者として活躍する傍ら、オランダでの取材を通してディック・ブルーナとの親交を深めました。
その際にブルーナから見たり聞いたりしたことを一冊の本にまとめておくことに意味がある――そうした想いから本作の執筆を開始し、ブルーナ研究の貴重な資料となっています。
ディック・ブルーナのプロフィール
1927年8月23日にオランダのユトレヒトに生まれ、2017年2月16日に老衰のため永眠。
日本では「うさこちゃん」として知られるうさぎの女の子「ミッフィー」の産みの親として有名であり、絵本作家としての人気を不動のものとした人物です。
日本との関係も深く、2011年に東日本大震災が起こった際には、震災に遭った子どもたちのためにイラストとメッセージを贈ってくださったことでも話題になりました。
現在でも根強い人気を誇り、世界中の人びとに愛され続けているミッフィーの絵本。
本作はそんなディック・ブルーナの生涯に迫るとともに、彼の創作への想いを集めた評伝です。
ブルーナのプロフィールをもっと詳しく知りたい方は、ぜひ本作を読んでみてくださいね(^^)
『ディック・ブルーナ ミッフィーと歩いた60年』の内容
2人の人物について紹介したところで、ここからはさっそく『ディック・ブルーナ ミッフィーと歩いた60年』がどういった内容の本なのか見ていきましょう。
以下、章ごとに簡単にまとめてみました。
序章
オランダでも日本でもブルーナの研究はまだまだ始まったばかり。
ブルーナについて知っているようで知らないこともたくさんありますよね。
そんな知られざるブルーナの想いや制作背景を書き残すために本作を執筆するに至った著者の想いが綴られています。
第1章 夢のような少年時代
ディック・ブルーナの生い立ち、ブルーナの生まれた町ユトレヒトの歴史、ブルーナの父親アルバートが経営する会社などについて書かれています。
ブルーナの幼い頃が「夢のような日々であった」理由として、家族間の強い絆、広い庭を駆け回るたくさんの動物たち、名だたる芸術家や作家との触れ合いなどが挙げられていました。
他、両親の信仰や幼い頃の手術の経験が創作活動に影響を与えていることも述べられています。
第2章 戦争の影
本章では、ブルーナの作品において暴力を彷彿とさせるような描き方が一切されていないことに注目し、なぜ彼が徹底して暴力や戦争の描写を避け続けてきたのかが説明されています。
「戦争はあってはならないことです」と述べるブルーナ。
戦時中に経験した地下生活、目の前で繰り広げられるユダヤ人への迫害――これらの経験が創作活動に大きな影響を与えていることがわかる内容でした。
第3章 破天荒な青年時代
戦争が終わり、ようやくオランダがナチスのもとから解放されると、ブルーナは高校を中退する道を選びます。
そこには父親との関係が大きく影響していました。
本章では、ブルーナと父親との間になぜ葛藤が生じることになったのか、高校中退後のブルーナがどのようにして芸術への道を志していったのか、ブルーナの恋などが詳述されています。
第4章 デザイナーとして
本章では、ブルーナが父親の会社で任されていた仕事内容や、親友となるピーター・ブラティンガとの出会いなどについて述べられています。
ピーター・ブラティンガは、メルシス社(ブルーナの著作権を管理する会社)の設立などに尽力した人物。
彼の存在がなければミッフィーのあの正方形の絵本は生まれなかったし、これほどまでに世の中にブルーナが知られることもありませんでした。
その多大な貢献に対する著者の敬意が読み取れます。
第5章 ブルーナの芸術理論
著者自身がディック・ブルーナの絵本に惹かれるようになった理由に始まり、ブルーナが影響を受けてきた芸術家やデザインなどについて述べられています。
ブルーナの絵画への想いを、絵本『うさこちゃんびじゅつかんへいく』を例に読み解いてみようという試みは大変面白いですね。
線の中に人間性を込めたい、と語るブルーナの考えが、彼の描く絵の中でどのように生きているのか。
少し哲学的な内容ですが、ブルーナの絵のルーツを探る上で重要な章と言えるでしょう。
第6章 うさこちゃんの世界
本章では、ミッフィーが日本をはじめ世界中で愛されている理由について、ブルーナカラーと呼ばれる「色づかい」と「シンプルさ」の二つの視点から述べられています。
ブルーナの絵本はシンプルさを追求したものであるとも言えますが、そこには涙ぐましいまでのブルーナの苦労がありました。
子どもにもわかりやすく伝えるために、いかにシンプルに表現するか――実際のイラストを参考にしながら紹介しています。
第7章 日本への思い
2011年3月11日――忘れもしないその日、日本を襲った未曾有の大震災。
筆舌に尽くしがたい哀しみ、流しても枯れることのない涙――悲嘆に暮れる日本の被災者に、とりわけ子どもたちのために、ブルーナがイラストとメッセージを贈ってくれたことは大きな話題になりました。
日本の子どもたちにメッセージを届けてほしい――ブルーナにその依頼をしたのは、本作の著者である森本俊司その人です。
東北とも縁の深い著者の想いが、ひしひしと伝わってきました。
他、本章ではブルーナが日本の美意識やデザインに高い意識を持ち、評価してくれていたことが綴られています。
第8章 ブルーナ、未来へ
2017年2月16日、老衰のため永眠されたディック・ブルーナ。
この章では、常に創作への意欲を燃やし続け人生を走り抜けてきたブルーナの晩年の作品のテーマや表現について紹介しています。
ブルーナ研究を今後ますます発展させていくべきであること、そしてブルーナの魂を受け継いでいかねばならないと締めくくられています。
終章
世界を見渡せば、いまだ絶えることのない紛争や暴力、差別によって苦しむ人びとが大勢います。
そんな中にあって創作活動を続けてきたブルーナの原動力は何か。
どんな子どもも、笑顔で幸せに暮らすこと。
ディック・ブルーナとは、どんな暴力も許さない本当の強さを持った人――それを知ってもらいたくてこの本ができたのだということが述べられていました。
『ディック・ブルーナ ミッフィーと歩いた60年』を読んだ感想
ここからは、『ディック・ブルーナ ミッフィーと歩いた60年』を読んだ感想について書きますね。
まず表紙をめくって真っ先に目に飛び込んでくる写真が印象的でした。
なんとも穏やかな微笑みをたたえているその男性こそが、本作の主人公ディック・ブルーナその人です。
この写真を一目見ただけでも、暴力を心の底から憎み、子どもたちを誰よりも愛したという彼のあたたかな人柄を感じ取ることができました。
さて、世界一有名と言ってもいいほどの人気を誇るうさぎの女の子ミッフィー。
その産みの親であるディック・ブルーナの生涯を詳しく辿った本作は、私にとっては初めて知ることばかりで驚きの連続でした。
まず、彼女の名前について。
私自身は「うさこちゃん」よりも「ミッフィー」として親しんできたので「ミッフィー」が本名だと思い込んでいました。
本作を読んで「ナインチェ」が本名なんだと知ったときは、ただただビックリでしたね。
「うさこちゃん」は日本語、「ミッフィー」は英語での呼び名なんだそうです(^^)
「ナインチェ」の名残が全然ない(笑)
表紙のミッフィーがとってもかわいくて、これだけで癒されます☆
もちろん、ミッフィーは表紙だけでなく本文の中でもたびたび登場するので、ミッフィーが好きな方にとってはたまらないですね♪♪
もう一つ私が初めて知ったのは、オランダと日本との戦時下における関係です。
そこにはオランダの植民地インドネシアも深く関わっており、戦争がいかに多くの国を巻き込み、人びとを苦しめたかを思い知らされました。
自分の無知を深く恥じるとともに、今後の世界各国との関係を考えていくならば、その国の歴史に目を向け、自国との関係を知っていくことが大切なんだと気付かされました。
オランダのみならず各国との関係を考えても、過去の歴史的出来事が原因で現代まで微妙な関係のまま来てしまっているのを見ると、ただただ悲しい気持ちになりますね・・・。
本文の中でディック・ブルーナの人間性を示す言葉として、暴力を心の底から憎んでいるという表現が何度も出てきます。
戦争の辛さ、無意味さ、愚かさを肌で感じ、もう二度とそんな世の中にならないように、暴力を連想させるものは一切描かなかったというディック・ブルーナ。
そこには、揺るぎない平和への哲学が込められています。
その志を受け継ぎ、どんな暴力も戦争も許さない世界をつくっていく責任が私たちにはあると強く思いました。
『ディック・ブルーナ ミッフィーと歩いた60年』の口コミ
本の販売サイトに『ディック・ブルーナ ミッフィーと歩いた60年』に関する口コミが載っていましたので、良い口コミと悪い口コミについて私なりにまとめてみました。
詳しい口コミ内容については、こちらの販売サイトをご参照ください♪(一部Amazonのものを含みます)
良い口コミ
まずは良い口コミから。
・イラスト表現や創作に対するブルーナの想いがとても魅力的だなと感じた。
・この本に出会ったおかげで、自分の中での人生の目標が増えた。
・気付かされたことも多いし、思わず涙してしまった部分もあり、とても良い本。
・本作を読むと、良い意味で「ただ可愛いだけ」のミッフィーではなくなる。
悪い口コミ
では次に、悪い口コミについて見てみましょう。
・文章が淡々としていて、ユーモア感が薄いように感じる。
まとめ
絵本作家として知られるディック・ブルーナの評伝『ディック・ブルーナ ミッフィーと歩いた60年』について書いてきましたが、いかがでしたでしょうか。
本作は知られざるディック・ブルーナの生涯と制作の背景を追ったものであり、本作を読むとブルーナがどんな想いを込めて創作にあたっていたかがわかります。
著者のミッフィー愛、ブルーナ愛がきれいにまとめられていることもあってか、口コミを眺めていても悪い意見はほとんど見られませんでした。
作者の生い立ちや絵本に込めた想いを知ることで、より深くブルーナの絵本の世界と向き合うことができるのでは?と考えるからです。
もちろん、絵本に書かれていることから何を感じるかは人それぞれですし、作者の想いを知ったからといって自分も同じように解釈する必要はありません。
しかし、絵本に込められたブルーナの平和への想いは、後世のためにも私たちが引き継いでいかなければならないと強く感じています。
その意味で、本作は世界平和を考える機会を与えてくれる一冊とも言えるでしょう。
少し話が飛躍してしまいましたが、本作の一番の特徴はやはり随所でブルーナのかわいいイラストが登場するところですね(^^)
見ているだけでも「ホッ」と心を和ませてくれます。
なぜミッフィーが世界中で愛されるようになったのか、なぜブルーナの絵はシンプルで鮮やかなものが多いのか。
その秘密を知りたい方は、ぜひ本作を手に取ってみてください(^^)
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以上、読書ミュージアム館長の秋月春花がお送りしました♪
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